「サウナは入れたいけど、電気代が怖い」——見積りの前にいちばん多く聞かれるのがこれです。結論から言うと、家庭用でおおよそ1時間あたり120円が目安。ただしこの数字は前提を書かないと意味がありません。何で決まるのか、1回・1か月でいくらか、施設に通うのと比べてどうか、断熱でどこまで変わるのか、そして下げる手はあるのかを、計算の前提ごと出します。
メーカー(TYLÖ/輸入元オストコーポレーション)の目安では、家庭用でおおよそ1時間あたり120円くらいからとされています。これは1kWhあたり30円で試算した場合の数字です。弊社のよくある質問にも同じ数字を載せています。
正直に言うと、この手の金額を1円単位で当てにいくのは無理です。機種の出力、部屋の断熱、地域と契約プランの単価、季節、そして何より使い方で動きます。桁と幅をつかむための数字だと思ってください。以下、その幅がどこから出てくるかを分解します。
まず前提の「30円」から。これは電気の単価です。ここを自分の家の数字に置き換えないと、以下の計算はぜんぶ他人の家の話になります。調べ方は簡単で、電気の検針票(またはウェブ明細)の「電力量料金」を、その月の使用量(kWh)で割るだけです。再エネ賦課金や燃料費調整も込みで出したいなら、請求総額を使用量で割ります。たいていの家庭で20円台後半から40円台に入るはずです。
ここで一点、見落とされやすい話をしておきます。従量制のプランは使うほど単価が上がる段階制になっていることが多い。つまりサウナで増えたぶんの電気は、平均単価ではなく「いちばん高い段階の単価」で買うことになります。逆に、夜間が安いプランを契約している家なら、サウナを夜に寄せるだけで単価が下がります。同じ機械を同じように使っても、契約が違えば金額は変わる——ここが最初の分かれ道です。
もう一つ、混同されやすいのが「200Vにすると電気代が高くなる」という話です。これは違います。電気代は電圧ではなく、使った電力量(kWh)で決まる。200Vにするのは、同じ電力をより細い電流で安全に送るためであって、単価が上がるわけではありません。
ただし基本料金は上がることがあります。8kWのヒーターを足せば、家によっては契約容量(アンペアやkVA)が足りなくなり、上げる必要が出ます。上げれば毎月の基本料金がその分だけ増える。金額は契約とプランによるので一律には書けませんが、「電気代が上がる」の中身は、使用量ぶんと基本料金ぶんの2つがあると覚えておいてください。今の分電盤で足りるかどうかは、現地で盤を見れば分かります(200V電源工事)。
家庭用のドライサウナヒーターは6.6kWや8kWです。単純に8kW×1時間×30円で計算すると240円。ところが目安は120円前後。倍違います。なぜか。
サウナヒーターは設定温度に達すると入切を繰り返します。1時間ずっと全開で燃えているわけではありません。全開に近いのは立ち上げ(予熱)の間で、温度が乗ってからは、逃げたぶんを足すだけの動き方になります。だから「定格出力×時間」で出した金額は、実際より多く見積もることになります。
言い換えると、電気代のかたちは「最初に大きく、あとは細く」です。予熱の間はほぼ全開に近い電気を使い、温度が乗ってからは断続的にしか入らない。この2つを1本の平均でならしたのが「1時間あたり120円」という目安の正体です。だから使い方が変われば、この平均もずれます。
この性質から、電気代を下げる勘どころが一つ出てきます。電気を食うのは「温めるまで」だということです。入っている時間を10分延ばすことより、予熱の回数のほうが金額に効きます。家族が別々の時間に入って3回温め直すより、続けて入ったほうが安く済む、という単純な話です。
職人からひとこと
「つけっぱなしにしたほうが安いですか」ともよく聞かれます。使わない時間まで保温するのは、待っている間ずっと逃げる熱を払い続けるということです。1日に何度も入る日でなければ、都度立ち上げるほうが素直です。
先に式を出しておきます。電気代(円)= 消費電力(kW) × 使った時間(h) × 単価(円/kWh)。ここまで読んだ方はもう気づいていると思いますが、この「消費電力」に定格の8kWをそのまま入れると2章のとおり倍近くずれます。メーカー目安の120円を8kW・30円から逆算すると、1時間ならして実質4kW前後しか使っていない計算になります。定格の半分。これが「入切を繰り返す」の中身です。
前提を書いてから計算します。1時間あたり約120円(1kWhあたり30円)、1回は予熱+入浴でおよそ1.5時間。この2つを掛けるだけです。
単価を変えるとこうなります。1回あたりの金額は単価に比例します。早見表にするとこうです(1回1.5時間・実質4kWで計算)。
| 電気の単価 | 1回 | 週3回(月12回) | 週5回(月20回) | 毎日(月30回) |
|---|---|---|---|---|
| 25円/kWh | 約150円 | 約1,800円 | 約3,000円 | 約4,500円 |
| 30円/kWh | 約180円 | 約2,200円 | 約3,600円 | 約5,400円 |
| 35円/kWh | 約210円 | 約2,500円 | 約4,200円 | 約6,300円 |
| 40円/kWh | 約240円 | 約2,900円 | 約4,800円 | 約7,200円 |
ご自宅の単価がこの4つのどれに近いかは、1章の割り算で出ます。表の縦に動くのが契約の話、横に動くのが使い方の話です。いちばん高い右下(40円・毎日)でも月7,200円——桁としてはその範囲に収まります。
くり返しますが、これは上の前提での掛け算です。断熱が甘い部屋なら6章のとおり跳ね上がりますし、逆に小さい部屋を使い方も含めてきちんと作れば、下の幅に寄ります。それでも、「毎日入ったら家計が破綻する」という規模の話ではないことは分かってもらえると思います。エアコンを1台余分に使っているのと同じくらいの桁だ、と考えてもらうのがいちばん実感に近いはずです。
なお、これはランニングの話だけです。本体と工事を含めた初期費用は別の記事にまとめました(サウナ設置の総額)。
「自宅に入れたほうが結局は安いですよね」と言われることがあります。ここも前提を置かないと答えになりません。入館料は地域と施設でまるで違うので、金額はご自身のいつも行く施設のものに置き換えてください。ここでは1回1,000円、往復の交通費なしで置きます。
ここで止めると自宅の圧勝に見えますが、それはフェアではありません。自宅サウナには初期費用があります。本体と工事で数十万から百万円台が動きます(サウナ設置の総額)。差額の年118,000円で初期費用を割れば「何年で追いつくか」は出ますが、その年数はたいてい一桁の後半から二桁になります。
だから弊社は「元を取れますよ」という売り方をしません。金勘定だけで判断するなら、通ったほうが安く済む人のほうが多いはずです。自宅サウナが効くのは、そこではありません。移動と受付と待ち時間がゼロになること、髪を乾かしてすぐ寝られること、人目を気にせず入れること、そして「行くかどうか迷う」という手間そのものが消えること。ここに価値を感じるかどうかで決めるものだと思っています。
逆に言えば、月に1〜2回しか入らない見込みの方には、正直おすすめしません。使わなければ電気代はかかりませんが、初期費用がまるまる遊びます。
出力の数字だけ並べると、こうです。
「じゃあスチームが安い」と言いたくなりますが、そう単純ではありません。電気代は出力の数字ではなく、その部屋を狙った温度に保つのに何kWh使ったかで決まります。部屋の大きさ、断熱、1回に入る時間しだいで逆転もします。同じ条件で並べて比べたデータを弊社は持っていないので、どちらが安いかを一般論で断定はしません。
ただし、金額の出方が違うことは言えます。ドライは高い温度まで上げるぶん予熱にかかる山が大きい。スチームは温度が低いかわりに、水を蒸気に変えるぶんの電気を使い続けます。短時間で1回だけ入るならスチーム寄り、長く入る・何人も続けて入るならドライ寄り——というのが現場での感触です。ここは実測ではなく感触なので、そのつもりで読んでください。
また、スチームには電気とは別に水がかかります。目安は30分で約3L。金額としてはごく小さいものの、ゼロではありません。設置面では、発生器を浴室から3m以内に置ければ今のユニットバスに後付けできます(スチームサウナとは)。どちらを選ぶかは、電気代よりも入りたい温度で決めるほうが後悔が少ないです(スチームvsドライ比較)。
ここが本題です。同じ機種でも、電気代は施工で変わります。
断熱が甘いサウナ室は、温めても熱が逃げ続けます。すると2章で書いた「温度が乗ったら入切する」という前提が崩れ、ヒーターが止まらなくなる。常に全開に近い状態で回るということは、金額は2章の「8kW×1時間」の側に寄っていくということです。実際に電気代が月1〜3万円増えた例もあります(後悔する7つの理由にも書きました)。初期費用の数万円をケチって、毎月それを払い続けるのは損です。
部屋の大きさも同じ理屈です。サウナの必要出力は部屋の体積で決まります。大きい部屋には大きいヒーターが要り、温める空気の量も増える。1人でゆっくり入るなら、大きい必要はありません。天井を無駄に高くしないのも効きます。「せっかくだから広めに」は、そのぶん毎月払い続ける選択だと理解したうえで決めてください。
細かいところでは、ドアのパッキンの当たり、ガラス面の面積、換気口の作り方も効いてきます。ガラスは気持ちのいいものですが、面積が増えれば熱は逃げます。どれも図面ではなく、現場で詰めるところです。だから見積りのときは、機種の値段だけでなく「その部屋をどう作るか」まで聞いてください。
設置が終わったあとでもできることを、効く順に並べます。
季節の話もしておきます。冬は同じ設定温度でも立ち上げに時間がかかります。外が寒ければ逃げる熱も増えるので当然です。どのくらい増えるかは部屋によるとしか言えず、弊社は季節ごとに実測したデータを持っていません。だから「冬は◯%増し」という数字は書きません。1〜2割ほど余裕を見ておいてください、というのが正直なところです。
逆に、やっても効かないことも書いておきます。ヒーターの上のサウナストーンを増やしても電気代は下がりません(蓄熱が増えるぶん、温まるまでは長くなります)。ロウリュの水を減らしても電気代にはほぼ影響しません。効くのは、温める回数と、逃がさないことです。
ランニングコストは電気だけではありません。正直に並べます。
どれも大きな金額ではありませんが、「電気代だけ見ておけばいい」ではない、というのは先に言っておきます。
そのうえで、電気代で後悔しないために、業者に確認しておくとよい点です。弊社に対してでも、他社に対してでも構いません。
使い方と部屋の条件さえ分かれば、電気代の目安も含めて総額でお答えします。浴室や置きたい場所の写真1枚からで構いません。熱さの感じ方そのものは人それぞれなので、実際に入ってみたい方は新横浜のショールームで体験できます(体験する・予約制)。
※本記事は一般的な考え方をまとめたものです。金額は1kWhあたり30円で試算した目安であり、契約プラン・地域・季節・機種・断熱・使い方によって変わります。実際の単価はご契約中の電力会社の明細でご確認ください。各機種の出力は価格表・機種ページに掲載しています。具体的なご相談はこちらから。